表現者になれ!

書かなければ残らない

レンズ

苦楽相伴うこの世界を、なるべく綺麗な色彩で見てこられたと僕は感じている。


もともと、僕にとって世界はだいたい明るい場所だった。苦難から実になる要素を抽出する力は、物心ついたときから持っていた。

 

先天的なものがすべてだとは思わない。家族や親友をはじめ周囲の人達が優しく接してくれたからこそ守ることができた前向きさだと思っている。

 

白血病になってその恩恵を最も実感した。苦しみに流した涙より、支える人の多さに流した嬉し涙のほうがはるかに多かったから。

 

 

 

しかし一つ、向き合いたくない問いがあった。

 

それは「自分の人生を、自分で認めていますか?」という問いだった。

 

クリーン病棟の証である二重扉の内側に閉ざされ、ベッドの上で透明化した時の流れに身を任せるとたびたび、この問いが頭を支配した。

 

すなわち、自分の存在や自分の抱く感情に、己の生を肯定するほどの価値があると、僕にはどうしても思えないのだった。

それは誰がどんなに僕を肯定してくれようとも変わらなかった。こんなに楽しい人生で、なぜ「よかった」と認められないのだろう。申し訳なくて、困惑した。

 

その戸惑いを抱えながら闘病を続けるうちに、がんに侵され、辛い治療に直面しながらも自己表現を止めない患者たちの姿が見えてくるようになった。


文、漫画、歌…。形はそれぞれだったが、彼らの作品からは、自分だけのものを生み出す喜びが、他の何にも代えがたい「自分が自分として生きた実感」を与えてくれるのだろうということが、ひしひしと伝わってきた。何よりも、それが闘病中に生み出された作品だということが刺激だった。

 

持ち前の明るさへの感謝とともに、彼らがくれた大切な気づきを残し、還元したいという思いで、この曲を作った。

レンズ

作詞 / 作曲 / 編曲:C7

soundcloud.com

 

瞳に映るこの世界の

美しさに何度声を奪われた?

小さな幸せも大きく見せる

このレンズは宝物

 

はじまりの日の まぶしい光から

瞼(まぶた)にしっかり焼き付けてきた

 

明るいレンズ くれてありがとう

集めた輝きをいま放って

まばゆい光で君を照らすよ

次の光につながるように

 

 

瞳に映るこの世界の

切なさに何度声を震わせた?

大きな悲しみも小さく見せる

このレンズは宝物

 

おしまいの日の かすかな光まで

瞼(まぶた)にしっかり焼き付けていく

 

歪まぬレンズ くれてありがとう

集めた輝きをいま放って

まっすぐな光で君を照らすよ

次の光につながるように

 

 

闇の中こそ 星は輝き

見えた いくつもの強い灯(あかり)

だから僕らは 今日を捨てずに

明日を目指す

 

 

透き通るレンズ くれてありがとう

集めた輝きをいま放って

僕の持つ光で君を照らすよ

次の光につながるように

 

僕だけの光で君を照らすよ

いつまでも いつまでも いつまでも…

  


 

(2019年9月8日 追記) 

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